皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

数学者ペンローズ博士が人間の意識過程の謎に数学、物理学を駆使して挑む一冊


購入してから読了まで実に6ヶ月かかりました。もう最初のほうは記憶が薄れてます(笑
しかも自分の力量不足のせいで未消化な部分多数ですが、それでもなかなか刺激的な読書体験でした。


本の構成についてですが、4章までは数学の話がメインです。
テューリングマシンやアルゴリズムの話題を中心に進み、計算可能性やゲーデルの定理といったものが解説されていくが、そのなかで折にふれ人間の思考が非アルゴリズム的であることが指摘されます。

5章から7章は一転して物理学の話。
ユークリッド幾何学から始まり、電磁気学相対性理論量子力学、果ては宇宙論にまで話が及びます。特にビッグバン、ブラックホールエントロピーについての部分では目から鱗が落る思いでした。(お世辞にも完全に理解したとはいえませんが…)

そして8章からはまだ見ぬ量子重力論(CQG)と脳神経学をベースに人間の意識過程に対する著者のユニークな主張が展開されていきます。


この本やはり見るべきは8章以降ですね。もちろんそれ以前の章もおもしろく、知的好奇心を満してくれるものではあるのですが、著者は上から俯瞰して書いていることが多い。ところが8章以降は著者自身も全貌を掴んているとはいえない事がらを解明しようとしており、なんというか著者の必死さとか"生の思考"を垣間見ることができます。そこらへんが一般の科学啓蒙書とは大きく異なり、この本の魅力ともなっている部分ではないかと思います。


で、結論はというと、CQGと意識に対するさまざまな考察がなされますが両者の間には依然、曖昧模糊としたものが横たわっている印象です。ただペンローズ博士はこの本を著した後も脳の意識活動に関する研究を続け、それに関する著作もあるということなので折を見てぜひ読んでみます。