[本] 近代日本政治思想史入門

近代日本政治思想史入門―原典で学ぶ19の思想

近代日本政治思想史入門―原典で学ぶ19の思想

近現代をいろどる19人の代表的な政治思想家たちの原典の解読を通して学ぶユニークな入門。(オビより)

思想家たちの著書の解説とともにその著者の生い立ちやその思想、著書が成立した歴史的背景とその意義、などが簡潔にまとめられた一冊となっている。
特に北一輝幸徳秋水といった、教科書に思想家として名前はでてくるけどあまり詳しくは触れられない思想家が、一体どんなことを考えまたその思想が世相とどのようにリンクしていたのかということの片鱗を知ることができ、お世辞にも近現代日本史にあかるいとはいえない自分にとっては非常に興味深かった。


本書がとりあげた人物の中には「この人、政治思想家か?」という人も含まれているが、まえがきには「直接政治とは関係がなくとも、近代日本における人間の政治的営みを考える上で、その前提となる歴史的環境を明らかにした著作はや、知的刺激に満ち作品は大胆にとりいれることにした。」とあり意欲的な著作であることを伺わせる。


そんな本書だが納得いかない部分が1つだけある。第17章 丸山眞男『現代政治の思想と行動』だ。
本書では各章を別々の著者が担当しており20ページ弱*1という限られた紙面で担当する著作をどのように解説するかというところに各担当の力量が問われるわけだが、第17章だけが完全に浮いている。
この章の担当者は丸山眞男のことが気にいらないのか、はたまた担当者も認めているとおりこの章でとりあげられた著書が権威あるものとされていることが気にくわないのか、とにかくこの章全体にわたって批判しかしない。
その批判も的を射ているならまだしも、素人目にはわけがわからない。まず日本ファシズムの定義という著作の意義からはあまり重要とはおもわれないことに噛み付き「それ*2」は「ファシズムではない何か」だと言い放ったかとおもえば、マッカーシズムファシズムと類比させることに対してはわけのわからない方程式的(?)記述を持ち出して批判する始末。しかもむすびは「本書批判の意義」って自己弁護ですか…orz


まぁそんな章もあるけど全体としてはとてもよくできた本だとおもうので機会があれば御一読くだされ。

*1:19人を300ページ強で紹介しているため平均で20ページ弱となる

*2:日本ファシズムのことね